年末の日本武道館ライブも今年で5回目。しかも最初の武道館と同じ12月26日だから、武道館もちょうど5年。"5"にちなんで結成された今夜のバンド"ファンタスティック5"ももちろん5人編成だ。ステージに現れたアンジェラのナンバーTシャツももちろん5!…と思いきや、背中には15の文字が。なるほど、デビューまでの10年をプラスした"心の15周年"もしっかりと刻まれている。早くも感無量といった表情のアンジェラに、天井から降り注ぐような祝福の拍手が寄せられた。
 ライブは「心の戦士」からスタート。ほぼ腰を浮かしたままのアグレッシブな体制で、力強い音色を叩き出している。オープニングの興奮というよりも、自身も大好きだと語っていたこの曲とこうしてライブで向き合えていることの喜びのような熱を発しているようだ。
<心の戦士 今も私は戦い続けているの>――そう歌う姿がまぶしく、美しい。

「みなさんこんばんは、"HOME SWEET HOME"へようこそ!今日は今までで一番ベストな武道館にするから、一緒に盛り上がってや!」

 アリーナから天井付近まで、びっしりと埋め尽くしたオーディエンスの手拍子が躍動した「Again」、ラストの美しいハーモニーが印象的だった「Kiss Me Good-Bye」、エモーショナルなバンド・サウンドと歌の力に引込まれた「孤独のカケラ」など、当たり前だがCDとは違う、そしてこれまでのどのライブで聴いたものとも違う名曲の形が次々と登場した。この日はおなじみのメンバー〜沖山優司(B)、西川進(G)、村石雅行(Dr)〜に加え、アンジェラの鍵盤の師匠でもある河野伸、アルバム「LIFE」収録の「母なる大地」でコーラスを務めた山根麻以という5人編成。そのため、アンジェラがピアノを離れて歌ったり、コーラス・ワークをふんだんに取り入れたアレンジなども取り入れてあったのだが、「MUSIC」では今宵ならではの演出が炸裂。まずはいつもどおりピアノを弾きながら歌い始め、間奏で河野伸との連弾へ。その後アンジェラはピアノを託してハンドマイクとなり、右に左に大きく手を振りながら会場を煽っていく。後半はコーラスの山根麻以と2人でソウルフルなフェイクの応戦!日本武道館を震わす圧倒的な声量で歌いきったアンジェラを、大歓声が包み込んだ感動的なシーンだった。
 「ハワイのお寿司屋さんで、メタリカのメンバーに娘の自慢をしたうちの両親」という奇跡のような話に爆笑しつつ、ここからはスペシャルな企画が目白押し。まずはメインステージから花道で繋がった客席中央の弾き語りステージ(ピアノ1台が乗っているステージ)に移動し、シングルのカップリングで披露してきたカバー曲の中でたくさんのリクエストがあったというSealの「KISS FROM A ROSE」を弾き語り。熱烈に、そして純粋に愛を伝えるアンジェラの日本語詞がとてもセクシーだ。シングル曲以外で最もリクエストが多かったという「One Melody」は、ギターの西川進と2人で披露。アコギとピアノ、そして2人のハーモニーが作り出した今夜のバージョンは、失った恋と後悔の先にある、とても大きな優しさが伝わるラブソングになっていたように思う。今夜だけのスペシャルなアレンジ、そして2人の雰囲気も含めてとても貴重な1曲だった。次は、アンジェラもカバーしたプロコル・ハルムの「青い影」のイントロから「LIFE」へ。ここでは、この曲の共作者でもあるキーボードの河野伸と2人のバージョンだ。2人の心のつながり、そしてこの曲が生まれたときの形を思わせる、シンプルであたたかい音色が胸を熱くさせた。熱いといえば、武道館をジャズクラブに変えた「Santa Fe'」。1万人以上から寄せられたリクエストの中で最下位だったという理由から選曲されたものだが、投票してくれた40人のために歌いたい!というアンジェラらしい発想から演奏が実現。ピアノ、ベース、ドラムのスリリングなアンサンブルがなんともクールでアツかった。その直後、まだ曲も始まっていないのに歓声が上がったのはアンジェラがギターを持ったから。「輝く人」はこれまでアコギだったが、今夜はエレキ。しかもU2の「Where The Streets Have No Name」を挟み込んであったりして、アレンジも大胆チェンジの貴重なバージョン。ロック色の強い「輝く人」は、よりいっそう力強いメッセージを浮き彫りにしていた。
 後半戦、オーディエンスの度肝を抜いたのは「宇宙」「モラルの葬式」「レクイエム」という、生と死をテーマにした3つの楽曲を合体させた新しい組曲。それぞれの曲の登場人物が交差しながら作り上げたひとつのストーリーを、音楽、朗読、音響、照明などが一体となって進めていく。恒例の<私が言うまで開けないでね!>封筒に入っていたタロットカード(再スタートや新展開を示す"Death"と、再生を意味する"Rebirth"がひとつになったもの)を手に、壮大な物語の世界を堪能する。ミュージシャンとしては言うまでもなく、エンターテナーとしての才能も遺憾なく発揮されたこの場面。チームとしての結束力と個々の美学が作り上げた、素晴らしい舞台だった。
 その後、途中経過では常にトップ5圏内に入っていた名曲「Rain」の弾き語りから、バンド・スタイルの「This Love」へ。感情がダイレクトに伝わる弾き語りの魅力と、バンド・サウンドが表現するダイナミクスがこの1曲の中で見事に共存していたこの日の演奏は、これまで聴いたどの「This Love」よりも鳥肌が立った。つい先日まで行なっていた弾き語りとバンドの2部構成というツアー、そこで得た感覚が次のスタイルを切り拓いたような1曲だったとでも言うべきか。表現は音数の問題ではないことをあらためて痛感させられたプレイだった。
 ライブもいよいよ終盤戦。「たしかに」の一体感に包まれたあとは、2つ目の封筒に入っていたアンジェラからの手紙を胸にみんなで「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」を大合唱。河野伸のピアノに合わせ、バンドメンバーもみんな前に出てきて歌っている。降り注ぐみんなの歌声の中、アンジェラも本当に幸せそうだ。最後の2行はピアノも止まって、正真正銘、オーディエンスの声だけになった。ライブでつながっていくことを何よりも大切に、そして楽しみにしているアンジェラの耳に、この声はどんな風に届いているのだろう…。何度も何度もありがとうの言葉を繰り返し、大きく手を振って歓声に応えながら、本編のステージは幕を閉じた。
 アンコールでは、「裏で泣いて泣いて、化粧取れてもうたわー(笑)!」と飛び出してきたアンジェラ。恒例のグッズ紹介では、今回のパンフレットに添えられた"サクラ色のハンカチ"を取り出し、「サクラ色」は4年前の今日行なった初めての日本武道館ライブのために書き下ろした曲であること。それはデビューまでの10年で味わってきた悔しさをぶつけ、夢は見続けるものだという強い気持ちを込めたものであること。このハンカチはその時に配られていたものの復刻版であることが告げられた。この日歌われた「サクラ色」は、<Keep on Dreamin' all your life>というフレーズが入った5年前と同じバージョン。サクラ色のハンカチが客席で美しく舞い、5年間共に歩み続けたみんなとのあたたかい時間を抱き締めた。アンジェラも思わずサクラ色のハンカチで目元を押さえている。
「最後に歌いたい曲は、デビュー曲の「HOME」です。故郷は出身地だけじゃなくて、愛し育ててくれた人たちでもあるんだってことは今までもずっと口にしてきました。デビュー前のライブで頂いたあるアンケートを読んで、故郷は"つながり"であり、自分らしくいられる時間のことなんだって思えて、視野がすごく広がったんですよね。そのアンケートは今でも大事に取ってあります。この先10周年、20周年、どんなことがあってもみんなの元に帰ってきて、この"故郷"の絆を感じたいと思います。今夜は本当にどうもありがとうございました」
 5年間の、そして15年分の思いを込めた「HOME」を弾き語り、何度も感謝を口にするアンジェラ。LIFE=LIVE。彼女が口にしてきたその言葉の意味を噛みしめながら、音楽でひとつになった日本武道館を抱き締めるような仕草で去っていく彼女の姿を見送った。

山田邦子

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